疲れやストレスが溜まった時、睡眠不足が続いたとき、あるいは風邪をひいた後などに、
唇の周りにチクチクとした痛みとともに現れる水ぶくれ。
多くの人が「熱の華」や「風邪の華」と呼んで経験したことがあるのではないでしょうか。
これは「口唇ヘルペス」というウイルス性の皮膚疾患です。
多くの人が経験する身近な症状であり、しばらくすれば放置しておいても治るため、軽く考えられがちです。
しかし、衛生環境が向上した現代において、その常識は変わりつつあります。
かつては子供の頃に誰もが発症する“大人への通過儀式”のようなものでしたが、
今や初めて感染する若者が増え、重症化するケースもあります。

この記事では、口唇ヘルペスに関する5つの意外な真実を皮膚科専門医が解説します。
その正体を知ることで、このありふれた病気への向き合い方が大きく変わるはずです。
目次
1.【事実1】ウイルスは消えない。「神経」に潜んでいるという事実
2.【事実2】昔と今では大違い?感染する年齢で重症度が変わる可能性
3.【事実3】きっかけは風邪や疲れだけじゃない!意外な再発トリガー
4.【事実4】最も注意すべきは「赤ちゃんへの感染」という危険性
【事実1】ウイルスは消えない。「神経」に潜んでいるという事実
口唇ヘルペスの症状である水ぶくれやかさぶたが2-3週間で治ると、病気も完全に治ったと思いがちです。
しかし、一度ヘルペスウイルスに感染すると、そのウイルスが体内から完全に消えることはありません。

症状が治まった後、ウイルスは皮膚から神経をさかのぼり、
「神経節(しんけいせつ)」と呼ばれる神経細胞が集まった場所に皮膚の深いところに潜伏します。
口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス1型の場合、
主に顔の感覚を支配する「三叉神経節(さんさしんけいせつ)」に隠れています。
そして、風邪、疲労、睡眠不足、ストレスなどで体の免疫力が低下すると、
潜んでいたウイルスが再び元気になると、つまり再活性化して神経を伝って皮膚に出てきて、症状を再発させます。
これが、口唇ヘルペスが同じ場所に何度も繰り返す理由なのです。
【事実2】昔と今では大違い?感染する年齢で重症度が変わる可能性
口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスの感染率(ウイルスの保有率)には、
実は日本人では大きな世代間格差があります。
かつては、家族間の口移しや頬ずりなどを通じて、ほとんどの人が幼少期に感染していました。
実際に、現在の日本の60代以上の世代では9割以上がウイルスの抗体を持っていると言われています。
しかし、核家族化や衛生環境の改善、生活習慣の変化により、現代の若者の感染率は大きく低下しています。
実際に、現在の60代以上の世代では9割以上がヘルペス抗体を持ちますが、
20~30代ではその割合が約505に、そして10代では約6人に1人程度にまで低下しています。
ちなみにこの抗体は単純ヘルペスにかからなくなる中和抗体ではなく、
「単純ヘルペスにかかったことがある」ことを示すだけの抗体です。
重要なのは、初めて感染する年齢によって症状の重さが変わる可能性があるからです。
幼少期に感染した場合、大人になってから再発しても症状は比較的軽く済むことが多いです。
一方で、大人になって初めて感染すると、皮膚の症状だけでなく発熱やリンパ節の腫れなど、全身症状を伴う重い症状が出ることがあります。
【事実3】きっかけは風邪や疲れだけじゃない!意外な再発トリガー
口唇ヘルペスの再発のきっかけとして、風邪、疲労、ストレスがよく知られています。
しかし、再発の引き金、きっかけとなるのはそれだけではありません。
以下のような、少し意外な原因もウイルスの再活性化を招くことがあります。
- 強い紫外線: スキーや海水浴などで強い紫外線を浴びた数日後に再発することがあります。
紫外線は皮膚の免疫を下げるためです。唇、顔の紫外線対策も重要です。 - 月経前: 女性ホルモンの働きが関係し、月経前になると再発しやすくなる女性がいます。
- 胃腸障害: 胃腸の調子が悪い時も、体の免疫力が低下する一因となり、再発のきっかけになることがあります。
- 薬剤の服用: 免疫抑制剤や抗がん剤、副腎皮質ホルモン剤などの使用が、ヘルペスウイルスの再活性化を促すことがあります。
これらの様々な再発のトリガーを知っておくことで、単に休息をとる、睡眠時間をしっかりとるだけでなく、
より効果的な予防策を講じることが可能になります。
【事実4】最も注意すべきは「赤ちゃんへの感染」という危険性
大人にとっては身近な口唇ヘルペスですが、免疫力が未熟な赤ちゃんや新生児に感染させてしまうと、
非常に危険な事態を招くことがあります。
新生児、赤ちゃんが単純ヘルペスウイルスに感染すると、ウイルスが全身に広がり、
脳炎などの重篤な症状を引き起こす可能性があります。最悪の場合、命に関わることもあるため、要注意です。
口唇ヘルペスの症状が出ている人が新生児と接する際には、以下の点を必ず守ってください。
- キスやほおずり、口移しでご飯をあげる、などは絶対に避ける。
- 赤ちゃんに触れる前には、必ず石鹸で丁寧に手を洗う。
- 使用したタオルや食器を共有しない。
大人にとっての「熱の華」が、赤ちゃんにとっては命を脅かす深刻な脅威になりうることを忘れてはいけません。
【事実5】繰り返すヘルペスとの新しい付き合い方「PIT」という選択肢
口唇ヘルペスの再発に頻繁に悩まされて困っている人にとって、新しい治療の選択肢があります。
それが「PIT(Patient Initiated Therapy)」と呼ばれる最新の治療法です。
これは、患者さん自身が治療開始の判断を行うもので、
あらかじめ医師から抗ウイルス薬(ファムシクロビル、商品名ファンビル)を処方してもらう方法です。
再発が頻回(目安として年に3回以上)で、かつ自分で初期症状がわかる患者さんが対象になります。
再発のサインである唇の「ピリピリ、チクチクする」といった違和感を感じた瞬間に、
すぐに事前にクリニック、病院でもらっていた抗ウイルス薬(ファムシクロビル、商品名ファムビル)の服用を開始します。
ウイルスが増殖し始めるごく初期の段階で治療を始めることで、水疱(水ぶくれ)などの症状を軽く済ませたり、
症状が出るのを防いだりする効果が期待できます。
さらに、神経節に戻るウイルスの量を減らし、将来の再発を抑制したり、
再発時の症状を軽症化させる可能性も指摘されています。
PITは、繰り返す単純ヘルペス、口唇ヘルペスに対して有効な最新の治療です。
まとめ
口唇ヘルペスは、単なる「熱の華」ではなく、神経に潜伏し続けるウイルスによって引き起こされる、再発性のやっかいな病気です。
日本ではかつては多くの人が幼少期に経験し軽い症状で済んでいましたが、
現代では、衛生環境や生活環境の変化によって大人になって初めて感染し、重症化するリスクも増えています。
またPITという最新の治療によって、口唇ヘルペスは
「症状が出てから飲み薬を飲む」病気から、「症状が出始めにスマートに管理する」病気へと変わりました。
口唇ヘルペスで悩んでいる方は江坂駅前花ふさ皮ふ科・千里中央花ふさ皮ふ科・みのお花ふさ皮ふ科に御相談ください。
動画でも詳しく解説しています。
口唇ヘルペスに関連するページ
・単純ヘルペスとは|江坂駅前花ふさ皮ふ科
https://esaka-hanafusa-hifuka.com/dermatology/herpes/
・豊中市で口唇ヘルペスを治療するなら|千里中央花ふさ皮ふ科
https://hanafusa-hifuka.com/symptoms/symptoms16/
・豊中市で単純疱疹を治療するなら|千里中央花ふさ皮ふ科
https://hanafusa-hifuka.com/symptoms/symptoms38/
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監修者 ミラドライ認定医・皮膚科専門医。 [ 資 格 ] ・医学博士(大阪大学大学院) [ 所属学会 ] ・日本皮膚科学会 / 日本アレルギー学会 |

